pupui’s blog

何も知らない私が在宅介護を選んだのは…

お医者さま

母が脳梗塞で倒れ、発見が早く処置出来たので

命は取り留めた

右半身麻痺と失語症が残った

ステージ4の胃癌を抱えたまま

寝たきりの状況となった

 

最初に若い脳外科のお医者さんが診てくれていたが

検査や処置を終えるのを待っていると

「先生からお話しがあります」

と呼ばれた

さっきよりもう少し先輩の30代後半くらいのお医者さんだった

外で待っていた時に慌てて入っていった男性で見覚えがあった

細目のスーツでパンツは足元がくるぶしまでのキュッと細くなった布地も高そうなスーツで

なぜ目に入ったかと言うと

待合所で床を見ながらボォーっとしていたら

先の尖ったピカピカに輝いた革靴が走ってきたから

お医者さんだってプライベートはお洒落もするだろうし

どんな服を着てようと自由です(笑)

ただ、キザな雰囲気が救急の待合所には

妙に場違いな気がして目に入ったからだ

 

倒れた家族を心配する家族の気持ちとは

裏腹に陽気にハキハキと話しを始めた

 

脳の半分は損傷を起こしている事

右半身麻痺と右側無視と失語症が後遺症として残っている事

高齢なのと既に胃癌のステージ4という事でこれ以上の回復は望めない事

脳内の出血をさせないよう24時間の監視が必要な事

 

そんな内容を矢継ぎ早に説明を受けた気がする

そして、こう言った

「お母さんはラッキーです!

本来なら高齢者や回復の見込みのない場合はやらない難しい手術で

血栓で詰まった先の血管にステントを埋め込む手術です

日本でも数人の医師しか出来ない難しい手術ですが

お母さんはラッキーです

望むのなら今からすぐそっちの大学病院に移送して

手術を受ける事が出来るのです

もちろん、難しい手術なのでその手術中に

大出血を起こしてしまう可能性もあります

でもお母さんはラッキーです

本当に日本でも数人しか出来ないし

私もその内のひとりです」…と。

 

(このC調な医者は寝たきりで

話す事も出来ないという患者の家族に

何度「ラッキー」と言うのだろうか…)

心の中で妙に冷静に考えていた

これから先はこのお医者さんを

「俺ってカッコいい先生」と表記する事にします💦

 

意味が分からなかった

「どうしますか?するなら時間がありませんよ!」

と急かされるが、意味がわからなかった

そのラッキーなお医者様方の手によって

貴重な手術を受けても

麻痺した右側は動かない

話す事も取り戻せない

癌も治らない

一命を取り止めたにも関わらず手術中に亡くなる可能性は大きい

 

私は何を選択させられようとしているのか

頭をグルグル回転させて

今の母に必要な選択肢は?と一生懸命考えるけど

意味がわからないのだ‼︎

 

「先生?母はその手術を受けても

胃癌の進行と闘って…もうそんなに時間がないという状況で、その危険な手術が必要なんですか?」

との私の問いに

「もちろん胃癌は治せません。

ただ、私のいるこの場所に運ばれたお母さんはラッキーなんです。その手術が受けられるチャンスがあるんです」と。

私がバカなんだろうけど…

これって医療の世界では普通の会話?

 

私の頭の中には????マークがいっぱい飛び交っていた

その中に微塵も「手術を受けた方がラッキー」というものは飛んでいない

だけど、これほど勧めるのは

私が馬鹿で「あの時に受けていたら…」

って言われない為に念押ししてるのか?と自信がなくなる

前日も診察を受けた外科のH先生を呼んで欲しいとお願いした。

「先生が立派なお医者さんなのは十分承知しています。

失礼な事なのかもしれません。

先生のおっしゃる事に意見があるのではなく

母をずっと診てくださっていた外科のH先生の見解を聞いてから判断させて欲しい」と

 

長く通った病院なので見知った看護師さんも多く

1人の看護師さんが入ってきて

「やっぱり!○○さん!カルテの名前みて

ビックリして…まさか⁈と思ってたのに!」

「H先生すぐ降りてくるからね!」

と母と私に声をかけて

母の肩や脚を何度もさすってくれていた

 

もう手術の準備に入っていた外科のH先生が

一旦、母のために

救急処置室まで来てくれた

「その手術、必要なん?

やるべきなん?」

と私の問いにH先生は

「僕の意見は、これ以上、お母さんに

痛い思いして手術するのは可哀想やと思う。これから先も癌は確実に身体を痛めつけてくるんやから…」

私の思いをH先生が言葉にしてくれたお陰で

私の思いも間違ってないと思えた

 

私の頭の片隅に

俺ってカッコイイ先生は母を実験台か

練習台にと思ってるのか?

という考えが消えなくて…

高齢で胃癌末期で…

好都合過ぎて、気持ちがスキップして

私の前を通り過ぎた時に

高そうなスーツや洒落た靴に目を奪われたのではなく

彼の隠しきれないウキウキ感が

場所にそぐわず、異質な空気感が

私の神経をノックしたんだと思う

 

いや!いや!

一生懸命に母のために治療してくださっているのだから

私みたいに人を疑うような考え方は

しちゃいけない‼︎

と何度も打ち消そうと頑張った

でもね、こういうのって

「考える」ことではなくて

「感じる」ことだから

自分でコントロール出来るものじゃ

ないんだよね💦💦

 

これから先、私はこの「感じる」事に

何度も何度も苦悩する事を

この時の私は知るよしもなかった